高度コンサルタント研修の第二回の成果報告がまとまりました。
今回も修学期の異なる4名の修了生がチームとなって成果を出してくれました。
本レポートでは、研修の概要と参加者の感想を中心にご報告いたします。
研修スケジュール
□研修事業の期間
・2024年4月29日(月)~6月25日(火)
□株式会社デサンへの報告会
・6月1日 (土) 社長への中間報告
・6月15日(土) 社長及び幹部社員への最終報告
□ふりかえり
・6月25日(火)
研修体制
□研修受講者
・亀田望(19期生)
・岸本健(19期生)
・楠本祥雅(19期生)
・中野直哉(18期生)
□評価者
・清水弘(技術経営研究科)
□事務局/コーディネイター/実習指導
・小田 恭市(中小企業イノベーションセンター長)
■受診企業の概要
社名 株式会社 デサン
本社・工場 埼玉県さいたま市北区大成町4-140〒253-0111
創立 昭和56年7月13日
資本金 3,000万円 従業者 90名
代表取締役 藤池一誠
経営理念 みんなが幸せになる会社
~私たちの事業を通じて、我社に関わる全ての人たちの明るい未来が描ける会社づくりを目指します~
主要事業 粘着シートフィルム及びテープの加工並びに販売、看板の製作並びに販売、
各種文字・マークの製造・貼付並びに販売、各種特殊印刷加工並びに販売、
塗装、前各号に付帯関連する一切の業務
研修を受け入れて頂いた企業(経営者代理アンバサダー)からのコメント
中小企業診断士の皆さまへ
この度は弊社の経営、業務に関わる診断・提案を頂き、誠にありがとうございました。
短時間での分析及び結果出しに驚きました!
日々、感じている課題を瞬く間に抽出し、改善提案へと結びつけるスピード感は、診断士さんだからこそのパフォーマンスだと感じました。
約半日の現状ヒアリング、現場視察からの中間報告にて、広い事業領域を偏ることなく包括的に課題を抽出頂きましたことには衝撃を受けました!
お伺いいたしましたところ、生成AIを活用してヒアリングメモを整理され作業の合理化を図られましたとのこと、最先端テクノロジーを使いこなす技術も、これからの診断士さんのあるべき姿だと思いました。
経営全般から営業力(新規開拓)・コンサルティング力(価値向上)・DX力(データドリブン経営)・組織力(未来に繋がる組織づくり)と多岐にわたる改善提案を頂きました内容は、来年度の事業計画に落とし込み実行していきます!
今回のご提案は、社長自身の気づきが多く、この先の経営に一つ一つ確実に活かして参ります。この度のご提案に、心より御礼申し上げます。
令和6年6月21日 株式会社デサン
代表取締役社長 藤池 一誠 代理
受講者の声(亀田さん:原文掲載)
■“ 研修 ”の建付けのおかげで、自身の未経験の分野でチャレンジができたこと。また、短時間で成果を出す思考法について、教授から学ぶことができたこと。
・今回、私が担当したのはデジタルコンテンツの領域で、企業の新事業である“キャラクタービジネス”の売上拡大に向けた課題を解決する施策を考える役割でした。キャラクタービジネスについて、知識ゼロの状態からいかに短時間で基礎知識を付けて、企業の課題を把握し、将来に向けた施策について社長と対話できる状態に持っていけるか、というところが自身のポイントであったと感じています。
・施策としては、プロジェクトチームの組成およびそのチームにおける具体的なタスクを整理しご提案しました。従来のフィジカル事業(塗装・ラッピング等)とデジタル事業(キャラクター等)の混成チームとし、社内の知見・ノウハウを掛け合わせたコンサル力の向上を目指し、会社の実情に沿った施策についてご提案することで、社長から「2025年度の組織・人事に組み込み、実行していく。」とご提案当日に施策実施の意思表示をいただいたことは、自身にとっても非常に嬉しい思いでした。
・現場視察/インタビューは1日のみ、という非常に限られた日数のなかで、社長に響くご提案を行うためには、事前の情報収集や仮説を立てておくことが重要であり、その“考える”プロセスについては、教授陣のご指導から非常に多くの学びを得ることができました。高度コンサルタント研修の参加により、チャレンジする心意気・限られた時間で成果を出す力、を身に着けることができ、参加して良かったと心から思っております。ありがとうございました。
受講者の声(岸本さん:原文掲載)
高度コンサルタント研修に参加させていただき、初めてプロとして企業診断に携わる形となりました。
養成課程における診断実習と異なる点として、やり易かった点は制約条件が少なく診断の自由度が高かったこと、逆にやりにくかった点は期間が短くリソースもより限られていたことでした。深さと広がりのバランス取りが必要でしたが、参加メンバーでそれなりに阿吽の呼吸で役割分担し着地できたと思います。
個人的には既存事業を担当し、生産計画及び原価まわりの分析と改善提案をアウトプットしました。養成課程診断実習の際に複数名で経験した原価分析を、今回はひとりでトライし改善の提案まで出し切りました。しっかりと身についているという自信にもつながりましたし、今後の診断実務でも使えるという手ごたえを感じたことは非常に大きな収穫でした。
養成課程を修了したのち、どのように診断士として活動していくかを暗中模索していた中での今回の研修参加は、私にとって非常に有益でした。NIT-MOT養成課程を修了された方が参加しやすいこの研修事業が更に活発になり、多くの修了生のスキルアップの場となることを願っております。
受講者の声(楠本さん:原文掲載)
今回、高度コンサルタント研修事業に参加する機会を得て、中小企業診断士の資格を取得後、初めてのコンサルティングとなりました。結論から言うと、自己成長につながる非常に有意義な事業であり、参加して本当に良かったと感じています。
クライアント先でのインタビューや調査は1日のみでしたが、限られた資料の中から仮説を立て、チームで課題を検討し、クライアントの合意を得ながら改善策を含む報告書を作成するというプロセスは、非常に難易度が高く、挑戦的でした。
しかし、研修事業の期間中、プレッシャーはありましたが、学院のお二人の先生方からご指導をいただいたおかげで、不安なく取り組むことができ、自分自身の成長を実感することができました。
今後、単独でコンサルティングを行う場合、得意な分野に注力するあまり視野が狭くなり、新しい知識やノウハウの習得が難しくなることを懸念していましたが、定期的に本事業に参加することで、これを解決できると考えています。
最後に、ご指導いただいた先生方、そして一緒に取り組んだチームの皆さんに心から感謝申し上げます。
受講者の声(中野さん:原文掲載)
今回の高度コンサルタント研修事業を受講させていただき、本当にありがとうございました。研修事業を受け入れていただきました株式会社デサンの藤池社長はじめ経営陣、幹部、社員のみなさま、そして研修事業主催の中小企業イノベーションセンター長小田先生、ご指導いただいた清水研究科長、日工大MOTのみなさま、また今回チームを組んだ登録養成課程同期の仲間たちに感謝いたします。
今回の事案につきましては、私は当初からデジタル領域とリアル領域を行き来し、両者が連携により相乗効果を生むようなビジネスモデルを描いていました。最後の発表でも述べましたが、実のところ、それは私の独創ではなく、平成27年であったか、経産省が打ち出したSociety 5.0 の世界の絵姿なのです。ところが発表後の神保町の懇親会で、藤池社長から、自分が追求していたのはまさにそれだ、Society 5.0 の絵姿をどうにか活用できないかと散々考えていた、発表でSociety 5.0 という言葉が出てきて驚いた、とお聞きし、私自身も驚きました。これは、私が藤池社長の考え方とシンクロできたか、あるいは誰でもシンクロできるような事案であったか、またはただの偶然、ビギナーズラックかと3つ4つの可能性を考えることができますが、やはり社長のお心と波長が合ったのではないかと考え、今後の自分の中小企業診断士として活動していく上で、小石のようではありますが、一つ小さいけれども、硬い支えとなるのではないかと思います。
他団体で実施されるポイント付与事業に比べ、費用対効果も高く、他の方々にもぜひお薦めいたしますが、それだけにこの事業を継続させていく上で、登録養成課程の実習や他団体で実施される事案との違い、「高度化」が意味するところや求められる達成度の定量化乃至明文化、ひいては達成度から逆算しての事業全体の体系的整備等、まさに「形式知化」的なところも求められるかもしれません。そのためにもし、手が必要であれば、そちらにもぜひ進んで取り組ませていただければ幸いです。それが日工大MOT修了生として、いくらかの貢献になれば、と思います。重ねてですが、今回はありがとうございました。
コーディネイター/実習指導者(小田先生)からのコメント
受講された皆様へ
今回の研修先企業は埼玉県から紹介頂きました㈱デサン社です。
㈱デサン社は大型特殊車両の塗装を手掛ける製造業(物的生産)とデジタルコンテンツを手掛ける情報サービス業(知的生産)の「二つの異なる事業システム」を持っており、この特徴を如何に活かすかが提案の最大のポイントです。
①塗装事業では原価管理、生産計画、生産管理の徹底によって生産性を高めるとともに、塗装工程における技能の体系化/技術化とともにIT化による品質安定と合理化が求められます。塗装の受注案件のグループ化とその標準時間設定のための社内関係者の意識統一化が基本的課題となります。
②デジタルコンテンツ事業では、顧客ニーズに応えられるようなコンテンツの創作力、多様なコミュニケーションツールを駆使した編集力が求められます。まずは、社内人材の知的生産活動を刺激出来るような創作環境の整備と動機付けとともに、外部の専門性の高い人材を取り込んだチーム作りが課題となります。
③こうした事業を進めるためには効果的な顧客開拓が不可欠です。塗装事業では原価管理をベースに儲けられる顧客と案件の選択化、デジタルコンテンツ事業では社内人材の人脈とWebマーケティング手法の活用が課題となります。
④塗装事業(物的生産)とデジタルコンテンツ事業(知的生産)の異なる事業システムがそれぞれに高い価値を創造するだけでなく、この二つの事業の組合せによるシナジー効果を如何に高めるかが組織的課題となります。
本研修事業では、上記の4点をベースに担当者を決定し、それぞれの領域における深堀りを行うことを基本的方針としました。ただ、テーマの性格上、それぞれが独立したものでなく相互の調整/関係づけが求められ、研修メンバー間のコミュニケーション力も問われる研修でありました。
最終報告後、デサン社藤池社長から研修で提案された内容は今後の事業計画に反映させたい旨の嬉しい返事を頂きました。4人の研修生の診断士としての渾身の「初仕事」がデサン社の活性化に貢献できることは我々の大きな喜びでもあります。
最後に、本研修事業をお引受け下さいました㈱デサン様、評価者として貴重なコメントを頂きました本大学院清水先生、研修に参加されました4名(亀田さん、岸本さん、楠本さん、中野さん)の皆様に厚く御礼申し上げます。
付記
今後、生成AIの飛躍的な発展が予想される中で、中小企業診断士は生成AIを如何に使いこなし、生成AIでは難しいような提案を如何に行えるかが課題となってきます。本研修事業のような「実践的な研修」と「ふりかえり」を積み重ねることで、研修生は論理的思考に基づく提案だけでなく、生成AIが苦手とする直観的思考を反映した提案も行えるように成長されることが期待されます。
この研修が皆様の今後の中小企業診断士活動に何らかの形でお役に立てれば幸いです。
注:論理的思考と直感的思考についてはNIT-MOT-Letter #21で棋士を対象に考察しています。ご興味のある方はご高覧いただければ幸いです。
https://mot.nit.ac.jp/column/nit-mot-letter/columns-20200904150717
ご参加の皆さま、お疲れ様でした!